万川集海は「まんせんしゅうかい」か「ばんせんしゅうかい」か

 『萬川集海』(以下、万川集海)は、延宝7年に藤林保武によって編纂されたという忍術伝書で、最も有名な忍術伝書である。その巻数は22に及び、類書の中でも最大級の内容を誇る。好事家にも広く知られていた『万川集海』の訓(よ)みは、ながらく、「ばんせんしゅうかい」であった。誠秀堂より刊行された「万川集海」の現代語訳本は「ばんせんしゅうかい」と訓んでいる。しかし数年前より「まんせんしゅうかい」のみが普及し始め、現在ではこちらの方がメジャーとなった感がある。すでに読者の中でも、BよりMの方が馴染み深いという方が多いだろう。そして2015年、国書刊行会より発刊された初の全巻現代語訳本『完本 万川集海』(中島篤巳訳)における訓みがMであったことで決定的となった。同年末のNHK歴史秘話ヒストリア」で『万川集海』が紹介された際、そこに振られたルビはMであり、「まんせんしゅうかい」というみは、もはや通説になったと言っても過言ではない。

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