服部正成の父の謎

 「歴史上の忍者の名前を1つ挙げて欲しい」

 こう問われると、「服部半蔵」の名前を挙げる人も多いだろう。

 ご存知、服部半蔵正成である。彼は徳川家康の家臣で、「徳川十六神将」にも数えられ、”忍者である”とはちょっと言えそうにない存在だ。ところで、この半蔵正成の父親の名前を、ご存知だろうか。

 読者の多くの方が、「服部半蔵保長」と思ったのではないだろうか。1代目半蔵(半三)が保長、2代目が正成、3代目が読みが同じ正就(まさなり)、と一般的に認識されている。これは江戸時代後期に編纂された幕府旗本の家系図集『寛政重修諸家譜』によるもので、この本にそう、書かれている。しかし半蔵正成の子孫は幕府の旗本ではない。3代目正就は伊賀者頭をクビになり、子どもたちは親戚を頼って諸藩に召し抱えられたからである。実は『寛政重修諸家譜』に載る服部半蔵家の家系図は、保長の長男・保俊の子孫が提出した家系図に強く影響されている。

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